2016年のあなたのベストアルバムを教えてください。

David Bowie
Black Star


私は音楽を、主に2つの観点から捉えようとする。その音楽がいかに流麗で情緒的であるか、言葉選びに必然性があり、緊張と緩和の有機的な揺らぎが人間的であるかを楽しむ「芸術的側面」と、その芸術がどれほどの意図を持って録音され、録音技術としても特筆すべき点があるかを観察する「プロダクトの完成度」の2つだ。技術的に素晴らしいトラックに出会っても、芸術的に美しくなければ全く感動はしない。
その2点が最もハイレベルで合わさり、心を突き動かされたのがボウイのBlack Starであった。
前年に流行したLAの自由でブラックなジャズエッセンスを受けたか否か、対照的に彼はNYを拠点とした現代ジャズのミュージシャンたちを作品に招き入れた。それは世界のトレンドに依るものではなく、あくまでボウイの頭の中でなっている音楽を体現する者として招かれているようである。闘病中だった彼の代わりにプロデューサーのトニー・ヴィスコンティがブッキングしたように見えるが、プロデューサーと演者とが互いにクリエイティブである環境を担保し一つの作品を作り上げるという理想の制作スタイルである。肉体的だが非常にデザイン・制御された演奏だった。
そして、Look up here, I'm in heaven(見上げてごらん、俺は天国にいる)I’ll be free, Just like that bluebird(俺は青い鳥のように自由になる)と世に言い放った2日後に、本当に天国にいってしまった。哲学的にも宗教的にもあらゆる角度から本作品を考察することはできるが、何か見えない因果を感じざるをえない、とんでもない大傑作だった。

2016年のあなたのベストソングを教えてください。

Serpentwithfeet
flickering

Aluna George や How To Dress Wellらが所属するレーベルTri Angleの新人シンガー。
荘厳なフルオケを有機的にサンプリングした技術と発想にも脱帽だが、疎外感を感じる男女(?)の苦しみとそれをコントロールしようとすることで生まれる抑制的な芸術があまりに感傷的で、ズシンと心を突き動かされた。今後の動きが楽しみ。

Frank Ocean
Nights

前作「Channel Orange」にはユーモアさが作品を纏っていたので、それが一種の明快さとして万人に響いた。
今作は非常に内向的で、その難解さが多くの人を失望させたと聞く。的外れな意見だ。両義性の中に揺れる非常に人間的な苦しみを「恋」「セクシャル」「ドラッグ」など様々な観点から非常に高次元で描ききっている。川端康成に姿を重ねるほどだ。特にこの曲は夜に誰もが陥りそうな躁鬱な感情を淡々と語り、昼夜逆転の生活からくる哀愁をモチーフを崩さずままに歌い上げた。
情景描写も見事で、シーケンス同士の有機的な絡みあいも素晴らしい。

Friends ft. Bon Iver and Kanye West
Francis and the Lights

今年は「声サンプリング元年」と呼んでもいい。
ダンスミュージックでもサビのフックとして声ネタ(ピッチをいじるなど)が主流になっているが、特に今年は Francis and the Lightsの存在が大きい。彼が持つ「Prismiser」は実物を見たことがないので、ぜひいつか見たい。
トラック数を際限なく増やせるようになったことで、曲を構成する要素は無機質でシンプルさが求められるようになった。その中でも特に人間らしさや有機的な動きを担保する「人間の声」がフックアップされたのは、今更ではなく時代の必然である。
ちなみにBruno Marzの「24K Magic」の冒頭部はTalk Boxだそうだ。Mr. Talk Boxというアーティストがクレジットされていた…彼は一体何者なんだろうか笑

2016年のあなたの音楽的な衝撃・事件・忘れられないライブ etc を教えて下さい。

世田谷のジョナサンで深夜にふわとろオムライスを食ってたら、宇多田ヒカルにロンドンに呼ばれたこと。

OBKR | PROFILE

1991年4月30日生まれ。歌手・プロデューサー。
Tokyo Recordings 代表取締役。東京のインディーシーンを中心にプロデューサー名義「OBKR」として、Capesonや水曜日のカンパネラなどの楽曲制作を手がける。宇多田ヒカルの新作アルバム「Fantôme」にて客演参加したことでも話題。

関連リンク

Twitter